ブロックチェーンとは、分散型台帳とも呼ばれる新しいデータベースです。P2P通信やHash関数などの暗号技術を組み合わせることで、取引データ等の情報を改竄・喪失リスクをヘッジしながら複数のコンピュータに同期できることが特長です。過去5年間で市場を急拡大させた後、現在は、セキュリティ上の課題を抱えつつも、中国を始め、金融・非金融を問わず、あらゆる産業での応用、ビジネス活用が進んでいます。ブロックチェーン 技術は、IoTやAIと補完しながら、今後どこに向かうのか?徹底解説します。
目次
- ブロックチェーンとは?
- ブロックチェーンの仕組み
- ブロックチェーンの種類
- ブロックチェーンの関連技術
- ブロックチェーン技術の応用事例
- ブロックチェーンのビジネス活用
- ブロックチェーンの今後(AIとIoT)
- ブロックチェーンの課題
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンは新しいデータベース(分散型台帳)
ブロックチェーン(blockchain)は、2008年にサトシ・ナカモトによって提唱された「ビットコイン」(仮想通貨ネットワーク)の中核技術として誕生しました。
ビットコインには、P2P(Peer to Peer)通信、Hash関数、公開鍵暗号方式など新旧様々な技術が利用されており、それらを繋ぐプラットフォームとしての役割を果たしているのがブロックチェーンです。
ブロックチェーンの定義には様々なものがありますが、ここでは、「取引データを適切に記録するための形式やルール。また、保存されたデータの集積(≒データベース)」として理解していただくと良いでしょう。
一般に、取引データを集積・保管し、必要に応じて取り出せるようなシステムのことを一般に「データベース」と言いますが、「分散型台帳」とも訳されるブロックチェーンはデータベースの一種であり、その中でも特に、データ管理手法に関する新しい形式やルールをもった技術です。
ブロックチェーンは、セキュリティ能力の高さ、システム運用コストの安さ、非中央集権的な性質といった特長から、「第二のインターネット」とも呼ばれており、近年、フィンテックのみならず、あらゆるビジネスへの応用が期待されています。
ブロックチェーンの特長・メリット(従来のデータベースとの違い)
ブロックチェーンの主な特長やメリットは、①非中央集権性、②データの対改竄(かいざん)性、③システム利用コストの安さ、④ビザンチン耐性(欠陥のあるコンピュータがネットワーク上に一定数存在していてもシステム全体が正常に動き続ける)の4点です。
これらの特長・メリットは、ブロックチェーンが従来のデータベースデータとは異なり、システムの中央管理者を必要としないデータベースであることから生まれています。
ブロックチェーンと従来のデータベースの主な違いは次の通りです。
従来のデータベースの特徴 |
ブロックチェーンの特徴 |
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構造 |
各主体がバラバラな構造のDBを持つ |
各主体が共通の構造のデータを参照する |
DB |
それぞれのDBは独立して存在する |
それぞれのストレージは物理的に独立だが、Peer to Peerネットワークを介して同期されている |
データ共有 |
相互のデータを参照するには新規開発が必要 |
共通のデータを持つので、相互のデータを参照するのに新規開発は不要 |
ブロックチェーンは、後に説明する特殊な仕組みによって、「非中央集権、分散型」という特徴を獲得したことで、様々な領域で注目・活用されているのです。
ブロックチェーンの仕組み
ブロックチェーンの基礎構造
ブロックチェーンは、その名の通り「ブロック」を「チェーン」のように順番に繋いだ形をしています(下図)。
「ブロック」とは、1MB分の「Tx(Transaction、トランザクション)」、つまり一定量に取りまとめられた取引データに、日付などのメタ情報を付与したものです。
身近なものに例えるなら、ブロックは、引き出しがいくつか付いているタンスのようなものだと言えます。
一つのタンスの中には複数の同じ大きさの引き出しがあり、その中にはさらに、例えば紙の契約書だとか現金が入っている、というようなイメージです(下図)。
(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)
タンスの中に契約書や現金をしまいこんだら、次に考えるべきことは、「どこに何があるかを正しく把握」して「泥棒に盗まれないようにしっかりと鍵をかけておく」ことでしょう。
これらの機能を果たしているのが、「チェーン」と例えられる、ブロックチェーンの記録・保管形式です。
具体的にいうと、各ブロックには、日付(タイムスタンプ)に加えて、「Hash(ハッシュ、ハッシュ値)」「nonce(ナンス)」「ターゲット」と呼ばれるメタ情報が付与されており、これらの情報をもとにして、ある一定のルールのもとで前のブロックと後ろのブロックがまるで鎖のように連結されています。
これらをタンスの例で言えば、1番目のタンスの鍵を2番目のタンスの中に入れて、2番目のタンスの鍵を3番目のタンスの中に入れて・・・としているイメージです。
さらに、より細かく見れば、「公開鍵暗号方式」と呼ばれる方法によって、引き出しごと(つまりトランザクションごと)にも個別に鍵がかけられています。
(出典:「かわいいフリー素材集いらすとや」画像より筆者作成)
公開鍵暗号方式とは、「暗号化と復号(暗号から元のデータに戻すこと)に別個の鍵(手順)を用い、暗号化の鍵を公開できるようにした暗号方式」のことです。
ブロックチェーンでは、トランザクションデータの流出等のリスクを減らすために、取引データをトランザクション化する際に、この公開鍵暗号方式が利用されています。
出典:Udemyメディア
チェーン構造に加えて、この公開鍵暗号方式を採用していることで、ブロックチェーンのセキュリティは非常に堅牢だと言えるでしょう。
こうしたブロックチェーンの基礎構造は、Bitcoin以降のブロックチェーンのほぼ全てに採用されています。
ブロックはどうやってつくられるか?
ブロックチェーンネットワークでは、世界中に散らばるノード(=ネットワーク参加者)によって新しくつくられたブロックが、ノード間で伝播することにより、リアルタイムでのデータ同時共有が実現されています。
ノードは、「コンセンサスアルゴリズム」と呼ばれる合意形成のルールに基づいて、特定の条件を満たすことでブロックを生成することができます。
コンセンサスアルゴリズムとは、中央管理者が不在であるブロックチェーンにおいて「どのデータが正しいか?」を決めるための、不特定多数のノードによる合意方法のことです。
コンセンサスアルゴリズムは、ブロックチェーンプラットフォームの種類(後述)によって異なり、代表的なところでいえば、例えば、次のような種類があります。
- ビットコイン:PoW(Proof of Work、プルーフオブワーク)
- イーサリアム:PoS(Proof of Stake、プルーフオブステーク)
- ネム: PoI(Proof of Importance、プルーフオブインポータンス)
- リップル:PoC(Proof of Consensus、プルーフオブコンセンサス)
このうち、最も有名なPoWでは、次の2つの原理によって、データの正当性を担保しています。
- PoWの原理①(1つ目の役割:ブロックの生成条件)=「ブロックのメタ情報に関する計算に成功するとブロックを生成できる」
- PoWの原理②(2つ目の役割:フォークへの対応)=「複数のブロックが生成された場合、最も長いチェーンを正統とし、その中に含まれるブロックを正しいと認める」…”ナカモト・コンセンサス”
まず、1点目として、PoWでは、ブロックの生成過程で、「マイニング」と呼ばれる、ブロックのメタ情報(「Hash」「nonce」「Target」)を用いた計算作業をノードに課しています。
平たく言えば「ある条件を満たす数字を見つけましょう」という計算ですが、この問題を解くためには莫大なコンピュータの電気代がかかるため、簡単にはブロックをつくることはできません。
とはいえ、ビットコインでは、ブロックを無事に生成できると報酬として仮想通貨を手に入れることができるため、多くの人がブロックづくりに挑戦し、同時に複数のブロックが生まれてしまうこともあります(「フォーク」と呼ばれる事態)。
そこで、2点目として、PoWでは、複数のブロックが生まれた場合は、「最も長いチェーンに含まれるブロックが正しい」という基本原理を採用しています(ナカモト・コンセンサス)。
このように、ブロックチェーンネットワークでは、非中央集権的でありながらデータの正しさを担保するために、コンセンサスアルゴリズムに基づいたブロック生成が行われています。
ブロックチェーンの関連技術
P2P(Peer to Peer)通信
ブロックチェーンに利用されている最も代表的な関連技術が「P2P(Peer to Peer、ピアツーピア)通信」です。
P2Pとは、パーソナルコンピューターなどの情報媒体間で直接データの送受信をする通信方式のことで、従来のデータベースの「クライアントーサーバ型」と対比されます。
出典:平和テクノシステム
クライアントーサーバ型では、情報媒体間でデータの送受信を行う際に、データ共有を行う媒体間で直接通信せず、第三者媒体をサーバとして経由するため、どうしても中央管理者の存在が不可欠でした(Google ChromeやAWSをイメージするとわかりやすいでしょう)。
これに対して、P2Pでは、媒体間で直接やり取りを行うために、第三者のサーバを必要としません。
したがって、ブロックチェーンの最大の特徴でもある「非中央集権性」は、まさにこのP2Pによってもたらされたものと言えます。
なお、P2Pは、第三者を介さない個人間送金や、無料インターネット電話サービスの先駆けともいえるSkypeなどに用いられています。
Hash(ハッシュ値、ハッシュ関数)
ブロックチェーンの各ブロックには、データの対改竄性を高めるために、「Hash値」と呼ばれる値がメタ情報として埋め込まれています。
Hash値は、「Hash関数」と呼ばれる特殊な暗号化技術を通して作られます。
ブロックチェーンでは、一つ前のブロックをHash化したHash値を次のブロックに渡し、それを織り込んでブロックを作成します。
Hashは少しでも入力値が変わると全く異なる出力となるという特徴があります。
また、その他に出力値の長さが入力に関わらず一定であること、出力から入力を類推できないという特徴があります。
まとめると次のような特徴があり、ブロックチェーンのメリットにつながります。
ブロックチェーンの種類
ブロックチェーンの分類方法
ブロックチェーンは大別すると以下のように分けることができます。
ノードの参加者が限定されていないか、限定されているかが大きな論点です。
ノードの参加者が限定されているPermission型は企業向けのエンタープライズ用途に好まれますが、一方でこの仕組みはブロックチェーンを使う意義が薄いのでは、という指摘もあります。
代表的なブロックチェーンの種類
前述の分類に従い、頻出するブロックチェーンをマッピングしたものが次の図です。
企業向けの開発では中央集権によっているQuorum(Ethereumから派生)かHyperLedger Fabricを利用します。
開発基盤としてのブロックチェーンプラットフォーム
ブロックチェーンを活用したプロダクト・サービスの開発には、開発の実装基盤となるプラットフォームが不可欠です。
ブロックチェーンのプラットフォームには、用途に合わせて数多くの種類があります。
代表的なブロックチェーンプラットフォームは、次の通りです。
プラットフォーム名 |
誰向けか? |
用途例 |
エンタープライズ向け(toC企業) |
トークン、ゲーム、etc |
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エンタープライズ向け(toC企業) |
ゲーム、etc |
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エンタープライズ向け(toC企業) |
ゲーム、etc |
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エンタープライズ向け(銀行) |
銀行間送金(特化) |
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エンタープライズ向け(toB企業) |
銀行間送金、企業間プラットフォーム、etc |
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エンタープライズ向け(toB企業) |
企業間プラットフォーム、etc |
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エンタープライズ向け(toB企業) |
企業間プラットフォーム、etc |
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個人向け |
個人間送金 |
上表のように、8つのプラットフォームを用途の観点から分類すると、大きく次の4つに分けることができます。
- toC企業向け:ゲームなどの開発に向いている
- toB企業向け:業界プラットフォームなどの開発に向いている
- 銀行向け:銀行間送金に特化している
- 個人向け:ちょっとした送金の手段として使われる
自身が推進するプロジェクトに向いているプラットフォームを把握し、その特性を理解しておくことは、開発者だけではなくビジネスサイドの担当者にとっても有益です。
????参考記事:『ブロックチェーンのプラットフォームは用途で選ぼう!開発基盤の特徴を解説』
ブロックチェーン技術の応用事例
2020年現在、ブロックチェーン技術で最も頻繁に応用されているのが、次の2つです。
- トークン
- スマートコントラクト
いずれも、フィンテックはもちろんのこと、非金融領域の産業応用に欠かせない技術と言えます。
トークン
トークンは、ビジネスの文脈上では「交換対象を限定した小さな経済圏を回すための使い捨て貨幣」といった意味で用いられる概念で、非中央集権的なブロックチェーンとセットでビジネス活用されます。
【トークンの種類】
区別のポイント |
トークンの種類 |
意味 |
身近な例 |
トークン自体に金銭的価値が認められるか? |
Utility Token (ユーティリティトークン) |
具体的な他のアセットと交換できて初めて資産性が出てくるトークン |
・パチンコ玉 ・図書券 ・電車やバスの切符 ・遊園地の入場券 |
Security Token (セキュリティトークン) |
それ自体に金銭的価値が認められるトークン |
・株券 ・債権 |
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トークンを相互に区別するか? |
Fungible Token …(*) (ファンジブルトークン) |
メタ情報如何にかかわらず区別されないトークン |
・純金 (→誰がどこで所有する金1グラムも同じ価値をもつ) |
Non Fungible Token (ノンファンジブルトークン) |
同じ種類や銘柄でも個別に付与されたメタ情報によって区別されるトークン |
・土地 (→銀座の1平米と亀有の1平米は同じ単位だが価値が異なる) |
例えば、ICO(Initial Coin Offering、イニシャル・コイン・オファリング、新規仮想通貨公開)やSTO(Security Token Offering、セキュリティ・トークン・オファリング)といった資金調達方法であったり、ファンコミュニティ専用の共通貨幣などに用いられています。
????参考記事:『【ブロックチェーン】トークンのビジネス活用〜STO、Utility Token〜』
スマートコントラクト
スマートコントラクトは、1994年にNick Szabo(ニック・スザボ)という法学者・暗号学者によって提唱され、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブリテン)がEtheruem基盤上で開発・提供し始めたコンピュータプロトコルで、「契約(コントラクト)の自動化」を意味しています。
自動販売機にも例えられるスマートコントラクトの技術を用いることで、「プロセス・取引の全自動化・効率化」を実現し、世の中の不便や非効率を無くしていくためのブロックチェーンの思想を社会実装していくことが期待されており、例えば、DEX(分散型取引所)や投票システムなどに利用されています。
????参考記事:『スマートコントラクトとは?ブロックチェーンの社会実装手段を解説!』
ブロックチェーンのビジネス活用
分散型台帳、トークン、スマートコントラクトといったブロックチェーンの諸側面は、実際のビジネス課題に合わせた様々なソリューションとして社会実装されています。
ビジネスソリューションとしてのブロックチェーンは、金融/非金融/ハイブリッドの3領域に分けて考えることで、事業化に取り組みやすくなります。
第一の領域である金融領域は、暗号資産(仮想通貨)の利活用を目的としたビジネス領域です。
BTC(ビットコイン)やETH(イーサ)を始めとした暗号資産の取引市場や、ICOやSTOといった暗号資産やトークンを利用した派生市場での活用が行われています。
出典:pixabay
第二の領域である非金融領域は、暗号資産(仮想通貨)を使わない領域のことです。
台帳共有や真贋証明、窓口業務の自動化など、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で、今、最も注目を集めている領域と言えるでしょう。
この領域の活用事例は、次のように多岐に渡っています。
- 自律分散型図書館DAOLIB構想
- 職歴証明のWorkday Credentials
- 医療用品の寄付の追跡ポータル
- Socios.com(サッカーファントークン)
- 医療データプラットフォームのメディカルチェーン
- 国連、難民・ホームレス等向けIDサービス
その結果、実は、前述の経済産業省によるブロックチェーン関連市場規模予測でも、全体67兆円のうち、いわゆる金融領域はわずか1兆円で、残りの66兆円は非金融領域に含まれるマーケットです。
【再掲】
出展:平成27年度 我が国経済社会の 情報化・サービス化に係る基盤整備 (ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに 関する国内外動向調査) 報告書概要資料
最後に、第三の領域であるハイブリッド領域は、金融×非金融、つまり暗号資産を非金融領域での課題解決へと応用している領域で、乱暴に言えば、「実ビジネスに仮想通貨決済を導入させたい領域」とも言えるでしょう。
いわゆる「トークンエコノミー」もこの領域に含んで考えるとわかりやすく、今後のブロックチェーン応用が期待されている領域です。
????参考記事:『ブロックチェーンのビジネス活用は非金融がアツい!事業化3つの視点とは?』
ブロックチェーンの今後(AIとIoT)
ブロックチェーンの今後を考える上で外せないのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)という考え方と、その前提条件となるIoT、AIという2つの概念です。
DXとは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を指し、ブロックチェーンの活用方法として最も期待されていることでもあります。
DXは、ビッグデータの活用を前提としています。
そして、IoT、ブロックチェーン、AIという3つの概念は、この「ビッグデータ活用を前提としたDX」というより大きな社会動向の要素として、下記のように相互に関連づけることができます。
- ビッグデータを集める → IoTによるハードウェア端末でのデータ収集
- ビッグデータを保存・管理する → ブロックチェーンによるデータベースの統合・管理
- ビッグデータを分析する → AI(機械学習)による大量情報の処理
- ビッグデータを活用する(社会実装する)
このように、今後のブロックチェーンは、ビッグデータを利用したDXというより大きな枠組みのもと、IoTやAIといった相互補完技術と協働しながら、これまで活用されてこなかった大量のデータを分析するためのデータ基盤として利用が進んでいくでしょう。
そして、その結果として、ブロックチェーンは、産業や社会全体の仕組みを大きく変え、効率化し、私たちの生活をより豊かにできる可能性を秘めています。
????参考記事:『IoT、ブロックチェーン、AI。ビッグデータを活用したDXとは?』
ブロックチェーンの課題
ブロックチェーンの未来の可能性を模索する中で、避けては通れない壁があります。
それは、ブロックチェーンの社会普及です。
上述したように、イノベーションとしてのブロックチェーンが本当に世界をより良く変えていくためには、社会のボリュームゾーンである「技術への未接触層」を巻き込み、彼ら彼女らの適切な理解と協力を得ていかなければなりません。
社会普及を実現するために、ブロックチェーンは主に、次の3つの課題を抱えています。
- スケーラビリティ
- ファイナリティ
- セキュリティ
この中でも、特に重要かつ深刻なのが、スケーラビリティの問題です。
スケーラビリティとは、「トランザクションの処理量の拡張性」、つまり、どれだけ多くの取引記録を同時に処理できるかの限界値のことを指します。
ブロックチェーンは、その仕組み上、従来のデータベースよりもスケーラビリティが低くならざるを得ないという課題を抱えています。
一般に、スケーラビリティは「tps(transaction per second、1秒あたりのトランザクション処理量)」で定義することができますが、実際に、代表的なブロックチェーンネットワークは、次のように不十分なスケーラビリティだと言われています。
- 一般的なクレジットカード:数万tps
- ビットコイン(コンセンサスアルゴリズムがPoW):7tps
- イーサリアム(コンセンサスアルゴリズムがPoS):15~20tps
- コンソーシアム型のブロックチェーンネットワーク(コンセンサスアルゴリズムがPoA):数千tps
このように、ブロックチェーンは、オープンで分散的なデータベースとして期待を集めている一方で、ネットワーク参加者が増えるとスケーラビリティが担保できなくなるという課題を抱えています。
この課題に対して、金融領域では、「ライトニングネットワーク(Lightning Network)」という新しい概念に注目が集まっています。
ライトニングネットワーク(英: Lightning Network)とは、少額決済(「マイクロペイメント」)等の小規模かつ多数回行われる取引の処理をブロックチェーン外で行い(「オフチェーン取引」)、最初と最後の取引だけをビットコインのブロックチェーンにブロードキャストして確定させる、ビットコインネットワークの新しい手法のことです。
ライトニングネットワークを活用することで、決済処理速度が2秒以内、毎秒100万件超の取引が可能なGO-NETというサービスが生まれるなど、今後の展開に期待がかけられています。
しかし、非金融領域での解決策は依然見えてはいません。
こうした原理的な課題は、ブロックチェーンが社会基盤となれるかどうかを左右する、重要な論点だと言えるでしょう。
????参考記事:『ブロックチェーンの3つの課題とは?〜スケーラビリティ、ファイナリティ、セキュリティ〜』